Raspberry Pi Compute Module 4 (CM4)は組込み向けのRaspberry Piのモジュールです。一般のRaspberry Pi 4B (Pi 4)と同じコアを採用しており、基本的にOSやソフトウェアも一般のラズベリーパイと同じように使用できます。
CM4を組み込んだPiLinkの産業用ラズベリーパイPL-R4の工場出荷時のイメージはRaspberry Pi OSがインストールされています。UbuntuもRAM4GB以上のモデルで動作可能です。その他にもラズベリーパイで動作可能なOSは多くありますので、今回はRaspberry Pi CM4にインストール可能*な7つのOSをご紹介いたします。
1. Raspberry Pi OS
Raspberry Piの公式OSで最も広く使われているディストリビューションです。多くのユーザーによって様々な用途での実績があり、安定した動作が求められる製造業やIoTシステムにも最適です。

利点
- 安定性とサポート:
公式OSであり、コミュニティからのサポートが豊富で、エラーやトラブルシューティングに困りません。PL-R4のデフォルトイメージもRaspberry Pi OSです。 - GPIO制御の容易さ:
Raspberry Pi OSはGPIOを簡単に制御できるため、センサやアクチュエーターを使ったシステムの構築が簡単です。 - 豊富な開発ツール:
PythonやC++など、さまざまなプログラミング言語に対応しており、開発者向けのツールも豊富です。
活用例
- 生産設備の予知保全・監視
- 自動化システム
- AGV/AMR
- 画像処理/画像認識…など多岐にわたります。
Raspberry Pi OSによる産業用ラズベリーパイの活用例、導入事例の詳細をご希望の場合はお問い合わせください。
2. Ubuntu
商業用途やエンタープライズ向けにも広く使われているディストリビューションです。Ubuntuの開発元Canonical社が Raspberry Pi向けの公式イメージ を提供しており、長期サポート(LTS)版も選択できます。
利点
- セキュリティ
LTS版では開発元のCanonical社よりセキュリティパッチが5年間提供されます。更新が定期的に提供されるため、業務利用や安定運用向きです。 - クラウドとの互換性
クラウドサービスとの統合が得意で、製造業のIoTデバイスがクラウドにデータを送信して集約するようなシステムに向いています。 - コンテナ技術との親和性
Dockerなどのコンテナ技術に対応しており、デバイスごとのアプリケーションを効率よく管理できます。
活用例
- IoTデバイスのデータ集約
工場内に設置されたIoTデバイス(温湿度センサ、カメラなど)のデータをクラウドに送信し、リアルタイムで監視するシステム。 - リモート管理
製造設備のリモート管理を行い、エラー発生時に即座に対応できるような仕組みの構築。
3. BalenaOS
BalenaOSは、IoTデバイス向けに設計された軽量なOSで、コンテナ技術を駆使してアプリケーションのデプロイメントを簡単にします。これにより、リモートで複数のデバイスを効率的に管理・更新できます。
利点
- リモート管理:
複数のRaspberry Piデバイスを一元管理でき、リモートでOSの更新やアプリケーションの管理が行えます。 - スケーラビリティ
大規模なIoTネットワークを簡単にスケールアップでき、製造業の設備管理がしやすくなります。 - コンテナ化されたアプリケーション
アプリケーションはコンテナ化されているため、デバイスごとのアプリケーションのバージョンを一元的に管理可能です。
活用例
- 製造ラインのデバイス管理
複数のIoTデバイス(温度センサ、カメラ、監視機器など)をリモートで管理し、データ収集やエラー報告を行うシステム。 - 設備の遠隔更新
工場のあらゆるデバイスをインターネット越しに更新し、障害時に即座に修正できるようにする仕組み。
4. OpenWrt
OpenWrtは、特にネットワーク機器向けに開発されたOSですが、IoTデバイス間のネットワーク通信やデータ伝送を重視した製造業にも適しています。
利点
- 高度なネットワーク設定:
高度なネットワーク設定やファイアウォール、VPN設定などが可能で、製造業におけるネットワークの安全性が確保できます。 - カスタマイズ性
ネットワーク関連の設定において非常に柔軟で、製造業のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。 - 小型デバイス向けの軽量性
コンパクトでリソース効率が良いため、低電力のIoTデバイスに最適です。
活用例
- IoTデバイスのネットワーク管理
工場内のIoTデバイス同士をネットワークで接続し、通信の安定性やセキュリティを確保。 - リモート接続とデータ収集
遠隔地にあるIoT機器をネットワークを通じて管理・制御するための基盤として活用。
5. Fedora IoT
IoTデバイス向けに最適化されたLinuxディストリビューションです。特にセキュリティとパフォーマンスを重視しており、製造業のIoTデバイスに適しています。
利点
- セキュリティ強化
IoTデバイス向けに特化しており、セキュリティの観点からも優れた機能を提供します。 - エッジコンピューティング対応
IoTデバイスでデータ処理を現場で行うエッジコンピューティングに対応しています。 - パフォーマンスと安定性
高パフォーマンスのデバイスで長時間動作するシステムに最適。
活用例
- 工場内センサの監視とデータ処理: センサから集めたデータをリアルタイムで分析し、製造ラインの効率化を実現するシステム。
- 設備の状態監視: 製造設備の動作状態を監視し、異常検出の早期化や修理計画を立てるためのシステム。
6. Home Assistant OS
もともとスマートホーム向けに設計されたOSですが、その自動化機能やデバイス管理機能は製造業にも非常に有用です。
利点
- 自動化機能
製造ラインの機械や設備を自動化し、効率化を図るための機能が豊富です。 - 統合管理
各種IoTデバイスを統合し、一元管理できるので、工場や倉庫内の設備の状態を常に把握できます。 - 簡単な設定
ユーザーフレンドリーなインターフェースで、システム設定や管理が容易です。
活用例
- 設備の状態監視
センサやアクチュエータを使って設備の動作状態を監視し、異常を即座に検出。 - エネルギー管理
工場のエネルギー消費を効率的に管理し、最適化するシステム。
7. LibreELEC
メディアプレーヤー向けに最適化された軽量OSですが、製造業でも活用できる場面があります。特に、監視システムやデジタルサイネージに最適です。

利点
- 軽量で高パフォーマンス
映像や音声データの表示に特化しており、リソース効率が良く、低電力での運用が可能です。 - カスタマイズ性
必要な機能を簡単に追加できるので、製造業の特殊なニーズにも対応可能です。
活用例
- デジタルサイネージ
製造ラインの進捗情報や作業指示を表示するシステム。 - 監視カメラ映像の表示
工場や倉庫内の監視カメラ映像を中央ディスプレイに表示するシステム。
次の記事で実際にインストールしています。ご参考ください。
「社内外で動画・スライドショーを流せるメディアセンターLibreELECも産業用ラズパイに担わせる」
https://pilink.jp/pl-r4_media_player/
Raspberry Pi CM4はその小型で高性能な特性を活かし、製造業やIoT分野で多くの可能性を秘めています。今回ご紹介したOSも製造業の効率化や自動化を支援する強力なツールとなります。用途に最適なOSを選び、効率的なシステム運用にお役立てください。
*本記事でご紹介したOSはいずれもCM4へのインストールが可能ですが、PL-R4上での動作をすべて保証するものではありません。弊社サポートの対象となるのは基本的に出荷時にプリインストールのイメージおよび弊社より提供するイメージのみとなります。