故障兆候検知

最新MEMSチップを実装したMEMS加速度センサを用いて、モーターの故障診断・予知保全を行った事例です。モーターに取り付けられたMEMS加速度センサは、直接STM32マイコン内蔵の産業用ラズベリーパイに取り付けることもできますし、無線センサボックスにつなぐことも可能です。本案件では、無線センサボックス(子機)を経由し、920MHzサブギガ帯通信でサンプリング間隔50μs、1回の計測点数2万点弱の計測データを約300kbpsで産業用ラズベリーパイPiLink4に取り付けられた無線基地局(親機)に送っています。計測頻度は一日5回程度ですが、この頻度であれば3-5年は無線センサボックスのバッテリ交換なしで稼働できます。
産業用ラズベリーパイで受信した生データは、ラズパイ上のオープンソフトウェアScipyで随時、高速フーリエ変換、エンベロープ変換などの数学的処理を行い、グラフ描画、故障判定、上位系(お客様のサーバー)へのデータファイル送信を行います。
各モーターの機械定数データベースを必要としないにも関わらず、運転開始時の正常状態から継続して故障評価インデックスを計測、比較することにより、非常に高い精度の故障事前検知が可能です。兆候監視アプリケーションはソースも含め無償公開しておりますので、画面構成、判定アルゴリズム、機械学習ロジックの追加などのカスタマイズも自由に行うことができます。

MEMSセンサによる計測革命

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、チップにセンシングのための機械部品を集積化したセンサ内蔵ICチップで、センサの低価格化・小型化に大きく貢献しています。ToF(光距離計)や温湿度といった一般的なMEMSセンサはよく知られていますが、近年ドップラセンサ(精密速度計測)や空気中の有害物質を測るガスセンサなど、産業用用途にも活用できる革新的MEMSセンサが登場しています。MEMSセンサは低電圧出力やSPI、I2C通信などが標準的なインターフェースとなっており、上述のSTM32などのマイコンで直接駆動することができます。例えば2万Hzまで計測できるMEMS加速度計チップを実装したMEMS加速度センサは、変換器なしに直接センサ接続モデルの産業用ラズベリーパイ接続できます。MEMSセンサと高性能マイコンSTM32, 産業用ラズベリーパイの組合せることにより、IoT高度計測システムを圧倒的な低コストで実現できる時代が来ています。

高性能MEMS振動センサによるモーター故障診断・予知保全

スマートフォンなどにはすでにMEMS加速度・ジャイロセンサが搭載されていますが、汎用MEMS加速度センサは計測可能周波数が5~10kHzでノイズレベルも高かったために、モーターや回転機構の故障診断には残念ながら不十分でした。ハーティングのMEMSベース振動センサは、2万円台という価格設定ながら、最新の2万Hz超まで計測できる産業用MEMS加速度センサと独自の高次フィルタ回路により、これまでのMEMS加速度センサの常識を破るレベルの高周波帯域、低ノイズ、高感度を実現。ベアリングのかじり等で発生する高周波異常振動の検知を可能にしました。このセンサは、マイコンを搭載したセンサ接続モデルのPiLink4または無線センサボックスに直接接続することにより、2万Hz(50μs)での高速サンプリング処理が実現できます。