昨今はIoTデバイスの4G/5G通信をするために専用のサービスが提供されています。産業用ラズベリーパイは、センサーなどで計測したデータを収集したい要望が多い端末です。Pi 5/CM 5の登場により処理性能もアップしたことから、生データの収集に留まらず、ある程度をRaspberry Pi内でデータ加工処理を施した後、データを送信させる運用が可能になりました。
通信速度も3Gの頃とは違い、4Gや5Gが選べ対応するバンド幅も多くなりました。ランニングコストも低くなり、高速な通信によるリアルタイム制も増しています。大きなファイルが送信できる点もIoT端末を運用する幅が広がっています。
ネットワーク環境による設置場所の都合から、無線LANや有線ケーブルではなく、SIMカードを利用した4G/5G通信が求められる場合が出てきます。
産業用ラズベリーパイ「PL-R4」シリーズのように、SIMカードを直接挿入できるスロットを装備したモデルなら追加の機材も要らず、これまでの通信手段に囚われずに柔軟な運用を検討できます。

このようにRaspberry Pi でモバイル通信の敷居は低くなりました。電源さえ確保できれば、屋外でIoT端末を使ったプロジェクトも諦める必要がなくなっています。
動作検証にMEEQ SIM
今回利用したのは「MEEQ SIM」という月額143円(税込)から利用可能なIoT向け通信サービスです。
「PL-R4」シリーズは、前述のようにWi-FiのみならずSIMカードスロットを搭載したモデルがありますから、SIMカードを交換するだけで自由に通信会社を選べます。
どのSIMカードも同じように動作するとはいえませんので、「MEEQ SIM」も検証してみました。前回同様に、問題無く利用することができました。
追加サービス例
契約する通信会社によっては、独自のサービスを展開しています。
サービス例
- MEEQ グローバルSIM
- MEEQ データプラットフォーム
- MEEQ AI
- MEEQ ビジネスツールズ
※別途オプションで5G通信も可能
IoTに特化しているだけに、MEEQ データプラットフォームの利用はイメージしやすいサービスでしょう。
Raspberry Pi 等で計測したデータを送信させる運用です。
MEEQ IoTストレージへ蓄積されたデータは、リアルタイムで閲覧できるのはもちろん、データベースへ取り込んで処理させること、更に自社のシステムと連携させる活用方法が考えられます。これはどの業態でも当てはまる運用方法でしょう。AWSアカウントから直接IoTストレージへのアクセスが可能なのも便利な仕様です。
前回のように、一般的なデータSIMカードであるモバイル通信の他、IoT端末向けのサービスはいくつか展開されています。
法人契約のサービスは、あまり一般的な紹介がされていないため、どのような通信会社があるのか分かりにくいですね。
個人でも契約できる一般的なデータSIMカードの運用で事が足りれば良いのですが、中にはIoT端末向けのサービスがあることも認識いただけばと思います。
産業用ラズベリーパイとモバイルネットワーク
「PL-R4」での4G(LTE)通信は、以前にOCNのSIMでご紹介しました。
この記事では改めてモバイル通信接続の方法を記載していますが、前回の記事も詳しくご紹介していますので合わせてご覧ください。
4G(LTE)通信モジュールでの接続設定
Raspberry Pi 側で確認
SIMカードはアクティベーションしてから使えるようになります。
契約会社によりアクティベーション完了まで時間がかかる場合があります。完了までしばらく待ちましょう。今回は測っておりませんが30分後には完了していました。

使用したのはRaspberry Pi Compute Module 4を搭載した「PL-R4」です。OSはbullseyeです。
- Raspberry Pi Compute Module 4
- bullseye 64bit
- eMMC 32GBで起動
- 専用アンテナ
- SIMカード(MEEQ)
最初に、Raspberry Pi側で接続情報がどうなっているのか確認しておきましょう。
単にipコマンドでeth0やwlan0、wwan0を確認します。
ip a
現在の接続状態を表せるnmcliコマンド
nmcli connection show

画像は接続済みの状態
コマンドは省略できます。単にcだけでも同じ結果です。
nmcli c
次も確認しておきました。
nmcli device status
4G(LTE)通信は、wwan0、デバイスはcdc-wdm0、接続タイプがgsmなどが分かりました。
接続設定(APN)
SIMカードは、ほとんどの契約会社で前もってSIMのアクティベート作業をする必要があります。
今回のMEEQも同様で、専用のユーザー画面からアクティベートを済ませておきましょう。アクティベートはデバイス本体ではなく、別のマシンからでも構いません。
SIMカードのアクティベートは済みましたか?
次はRaspberry Pi にAPNの接続設定をします。
「PL-R4」のように、SIMカードスロットが装備されていれば、ドライバのインストールなどは必要なく、接続させるプロファイルを作成するだけです。
ufwの設定
昨今はセキュリティリスクの観点からも、モバイル通信をする前に念のためufwでファイアウォールを設定しておきましょう。
sudo apt update
sudo apt install -y ufw
webはもちろん、sshやvncのポートは許可させ、ローカル環境の通信しか許可しないなど、現場や会社の実情に合わせて設定します。
詳しい設定は前回の記事をご覧ください。
UFW -ファイアウォール
前回同様に必要なポートだけ許可して進めます。
APNの設定をするnmcliコマンド
APNの設定をコマンドから行います。
APN設定に必要な情報は、契約先に情報があります。自分の環境で置き換えてください。
概ね送られてきたSIMカードの記載や契約書類に接続情報があります。
- con-name 接続名=任意で分かりやすい名前
- apn アクセスポイント名=SIM会社から提供されたAPN名
- user/password=SIM会社から提供されたユーザー名とパスワード
nmcliコマンド1行を実行すればAPN設定は完了です。とても簡単になりました。
読みやすいように改行させていますが、\
を外して一行に繋げて実行して構いません。
各情報を当てはめて実行します。
sudo nmcli con add type gsm ifname wwan0 \
con-name 接続名 apn アクセスポイント名 user ユーザー名 password パスワード
解説
ifnameはネットワークインターフェイス名を指定します。manページによると、アスタリスク(*)は値なしになり、wwan0が設定されていない場合にデフォルト名が採用されますから、初めての場合はアスタリスクでも構いません。(ifname "*"
)
既にwwan0があれば紐付けのため指定します。
ifname │ connection.interface-name
A value of * will be interpreted as no value, making the connection profile interface-independent.
Note: use quotes around * to suppress shell expansion. For bond, team and bridge connections a default name will be generated if not set.
(翻訳)
- の値は値なしと解釈され、接続プロファイルはインターフェースに依存しなくなります。
注: シェルの拡張を抑制するには、* を引用符で囲みます。bond、チーム、ブリッジ接続の場合、設定されていない場合はデフォルト名が生成されます。
引用元:https://manpages.ubuntu.com/manpages/focal/man1/nmcli.1.html#property aliases
実行後はネットワーク接続のモバイルブロードバンドグループに接続先名が表示されました。これでOKです。

接続の確認(Raspberry Pi 側)
4G(LTE)接続を確認するため、一時的に他の接続手段を無効化して検証しました。
有線LANの接続だけであれば、単純にLANケーブルを繋がないことでも構いません。
一時的にWi-Fi接続や有線LAN接続を無効にするコマンド
nmcli connection down 接続名(例:有線接続\1)
upコマンドを実行して再びアクティブ化できます。
nmcli connection up 接続名
GUI環境であれば、タスクバーにネットワーク接続モニタというパネルアプレットがありますから、新規追加して接続先の送受信パケットを確認することができます。

送受信パケットの値が増えていれば実際に通信できていることが簡単に分かりますね。
前回にご紹介したmmcli
コマンドで確認することで、電波強度も知ることができます。
通信モデムの詳細
mmcli -m 0
--------------------------------
Status | lock: sim-pin2
| unlock retries: sim-pin (3), sim-puk (10), sim-pin2 (3), sim-puk2 (10)
| state: connected
| power state: on
| access tech: lte
| signal quality: 100% (recent)
ステータス箇所にあるように、専用アンテナを介せば屋内でもシグナルクオリティは100%でした。

使用したモバイルネットワーク用アンテナ [LANTIP6701/TG.55.8113)]
接続できない場合
もしも設定をしても接続できないなら、SIMカードで4G(LTE)回線で、契約会社からIPアドレスが振られているかを確認してみましょう。
付与されたIPアドレスを含め、ルーターも契約会社のIPアドレスになっているでしょうか。
routeコマンドで確認してみます。
route -n
または
netstat -nr
ss -pt
今ではssコマンドもあります。それぞれ調べられる内容がオプションにより異なります。
どのコマンドもRaspberry Pi OSではそのまま実行可能です。
4G(LTE)通信のインターフェイス名はwwan0です。
IPアドレスの確認だけなら、ifconfigコマンドでインターフェイス名を指定して確認することができます。
ifconfig wwan0
IPアドレスが振られていて、プライベートIPでもなく、通信会社のルーターIPアドレスであれば、4G(LTE)で通信できている状態です。
Raspberry Piの公式ページを表示してみました。ちゃんとwwan0で接続されていることが分かります。

接続の確認(SIMカード会社側)
契約しているSIMカード会社には、接続の状態を把握するユーザー画面を用意しているところもあります。
今回のMEEQでは、ユーザー画面にログインすれば、通信量も一目で確認できます。

IoT端末向けのモバイル通信カード
他にもIoT向けのSIMカードは存在します。
通常のデータ通信用SIMカードもラズベリーパイで4G(LTE)通信ができることは同じです。
前回のOCNのSIMも、今回のMEEQのSIMも、「PL-R4」シリーズで動作を確認できました。
もし裏側にあるサービスもIoT向けに用意がされているサービスがあるなら、導入の手間が少なくなります。
イニシャルコストも含め、プロジェクト内容にあった通信サービスを選びたいですね。
産業用ラズベリーパイにも適しているSIMカードとしてご紹介した「MEEQ」の詳細はリンク先よりご確認ください。
MEEQ:https://www.meeq.com/meeq/index.html
記事寄稿:ラズパイダ
非エンジニアでも楽しく扱えるRaspberry Pi 情報サイト raspida.com を運営。ラズベリーパイに長年触れた経験をもとに、ラズベリーパイを知る人にも、これから始めたいと興味を持つ人にも参考になる情報・トピックを数多く発信。PiLinkのサイトへは産業用ラズベリーパイについて技術ブログ記事を寄稿。