社内外で動画・スライドショーを流せるメディアセンター
LibreELECも産業用ラズパイに担わせる

産業用ラズベリーパイは工場のような過酷な環境、主にシステム然とした使い方に需要があるのは周知の通りです。メディアセンターのようなメディアの再生といったエンタメ環境は必要無いと思われがちです。

まだPi 3Bの頃、世界的に有名なテーマパークのアトラクションでも使われていました。アトラクションの案内動画や演出の一種で流れるアレです。昨今では、某回転寿司チェーンの待ち状況画面や注文メニュー画面が有名です。

他にも教育用のマニュアル・説明を動画で流したり、会社窓口や展示会・店頭で流し続ける製品の動画など、これまでは恐らくビデオデッキやDVDプレイヤーが担っていた使い道は、すべてRaspberry Piとは言えませんが置き換えられています。

当然ながらプログラムで制御することもできますから、必要に応じて再生する動画や画像を切り替える使い方もあるでしょう。

今回は意外と需要がある動画再生を、産業用ラズベリーパイでも担わせてあげてみます。
メディアセンターで有名な「LibreELEC」をComputeModule 4(以下、CM4)にインストールしてみます。

産業用ラズベリーパイ「PL-R4」のように、高温環境や振動が懸念されたり、ダストが舞う環境などでも、設置スペースに事欠かないくらい小さい筐体は重宝されます。Raspberry Pi をモニターに繋ぐだけで済むため、据え置き用と想定しても簡単に持ち運べる大きさと重さです。

予め動画を保存しておくか、ネットワーク経由でファイルサーバからストリーミング再生させることも可能です。USBメモリーに保存するだけでもいいですね。

今回の環境

  • PL-R4 (CM4 eMMC 32GB メモリー4GB)
  • LibreELEC(v12.0.2)
  • 動画ファイルを保存したUSBメモリー
  • NASに保存したファイル

バックアップ

rpi-bootについては以前の記事をご覧ください。

「PiShrinkでイメージファイルの圧縮 RPI BOOTとddコマンドを使ったバックアップ方法」
https://pilink.jp/image_backup_pl-r4/

記事の通り、既にRaspberry Pi OSがインストールされている環境をバックアップし、後で元に戻せるようにしておきます。

LibreELECのメインはkodi

はじめに番外編として、Raspberry Pi OS上にKodiをインストールして再生させる方法をご紹介します。

LibreELECはメディアセンターとしてまとまっているOSです。
メインはKodiと呼ばれるメディアセンターのため、単にkodiをインストールすれば同じように使うことが可能です。

注意点としては、Raspberry Pi OS上で動作するため、どうしてもCPUのタスクを取られるため動作は鈍く感じるでしょう。少し試すだけであれば構いませんが、スペックが足りませんので常用するならばLibreELECをインストールすることをオススメします。

KodiだけRaspberry Pi OSのデスクトップにインストールするにはaptコマンド

sudo apt update
sudo apt install kodi

eMMCにインストールする

今回は新たにeMMC領域へLibreELECをOSとしてインストールします。
使用したLibreELECのバージョンは12.0.2です。(LibreELEC-RPi4.aarch64-12.0.2.img.gz)

Pi4/400/CM4は同じファイル名でした。
※LibreELECは記事執筆時点でComputeModule 5には対応していません。

前回の記事のように、rpi-bootを使いCM4を外部記憶領域として認識させ、Raspberry Pi Imagerで書き込むだけです。

先にフォーマットしてから書き込むと確実です。
フォーマット後にLibreELECをインストールするOSとして指定します。
rpi-boot後は外部記憶装置として認識されており、書き込み先として選べます。

追加の作業

CM4(またはPi 4)でのLibreELECをインストールした場合は、インストール後にconfig.txtの修正が必要になります。
USBを有効にする記述です。

Pi 4/CM4で必要となり、Pi 400、Pi 5では必要ありません。

CM4までは、1つのUSBコネクタをホストモード、デバイスモードと切り替えて使っています。
OSを書き込んだ状態ではデバイスモードのままですから、これをホストモードに変更してから起動させることでUSBに繋いだ機器が使えるようになります。

Config.txtの追記手順

LibreELECを書き込み後、もう一度rpibootで接続します。
WindowsPCならDドライブのように表示されたらconfig.txt内へ追記します。
今回はPi 4でrpibootを使いました。rpibootが成功すると外部記憶としてマウントされてからConfig.txtに追記します。

/boot/firmware/config.txtの最終行に追記

otg_mode=1

USB On-The-Go
otg_mode=1 は、より高性能な XHCI USB 2 コントローラーをその USB-C コネクタの代替ホスト コントローラーとして使用するように要求します。
otg_mode=0がデフォルト(標準)設定です。

引用:https://www.raspberrypi.com/documentation/computers/config_txt.html#otg_mode-raspberry-pi-4-only

書き込み後は、PL-R4本体にある書き込み可能スイッチを元に戻すのを忘れずに行い、再起動すればLibreELECが起動します。
これでUSBキーボードとマウスが使用できるようになりました。

LibreELECの日本語化

LibreELECは日本語にも対応しています。以前の日本語化の手順は現在と異なっています。
現バージョンでの日本語化は、アドオン設定でダウンロード&インストールすることで日本語化が可能です。

1つだけ先に変更しておいて欲しいのは、インターフェイスのフォントをスキンデフォルトではなく、Arialベースに変更しておいてください。これは以前と変わりません。

地域(Region)にある言語(Languages)にはEnglishしかありません。

フォントをArialベースに変更した後、日本語の言語パックをインストールします。
場所はメインメニューのアドオンから入っていきます。

Add-ons –> Kodi Add-on repository –> Look and feel –> Languages –> Japanese

最後にインストールを選べば日本語化されている状態になります。
これまでより分かりやすくなりました。

もし、フォントをArialベースに変更せず、日本語の言語パックを適用すると文字化けになります。

文字化けした状態

LibreELECの表示はすべてスキンの設定が元です。
他のスキンに変更すると、日本語を想定していないスキンが多く文字化けになることがあります。デフォルト(標準)のEstuaryのまま使うのをオススメします。

動画ファイルの指定

再生するのに一番簡単な方法は、USBメモリーに入れた動画ファイルの再生です。
認識されたらメニューのメディアソースに表示されるためUSBを挿すだけで済みます。

最初から存在しているメディアソースVideos、TV Showsは、~/storage/にそれぞれvideos、tvshowsというフォルダを指しています。

設定 –> ファイルマネージャーを使えば、新たにフォルダを作成したり、USBメモリーからファイルをコピーすることもできます。

独特な操作方法

LibreELECは少し独特な操作方法と見た目です。マウスとキーボードのどちらでも操作することが可能です。
他にもTVのCEC規格に対応しているため、テレビのリモコンに十字矢印キーや戻る・決定といったボタンがあれば、それらで操作することも可能です。別にリモコンが要らないのは便利です。

セットアップする場合など、キーボードを使うのが少し分かりにくいです。
5つの操作を覚えれば大抵の操作ができますから、いくつかご紹介しておきます。

  1. Enterキー
  2. ESCキー
  3. Enterキーの長押し
  4. cキー
  5. スペースバー
  6. 矢印キー

(※3と4は同じ)

Enterキーは決定

エンターキーは決定ボタンで覚えてください。
マウス操作だと左クリックです。

ESCキー

エスケープキーはキャンセルです。
前の画面に戻ることもあるため、戻るでも同じ意味です。
これはマウス操作だと右クリックです。

Enterキーの長押し

エンターキーを長押しすれば、カーソルの当たった条件でサブメニュー表示が可能です。
マウスの中ボタンと同じです。
次のCキーとも同じです。

Cキー

キーボードのCキーを押せば、カーソルで選択されている条件でサブメニュー表示になります。

メインメニューでUSBメモリー項目でCキーを押すか、Enterキーの長押しをすれば、USBメモリーを安全に取り外すサブメニューが出てきました。
キーを押す場所でサブメニューの内容は変わります。

スペースバー

スペースバー(スペースキー)は、複数を選択する時に使います。
主にファイルマネージャーでの操作です。
動画再生中は一時停止の役割になります。

オプションキーとして矢印キー

これに加えて、画面に出てくるオプションキーは、左矢印や上矢印といった具合に、画面によって異なりますが、主に左下に表示されているので探してください。

矢印キーは基本として上下が項目移動になりますから、それ以外のキーが割り当てられます。別の表示画面では、左右でしか選べない画面もあり、その場合は上矢印キーが割り当てられることもあります。

この画面構成だと左矢印キーがオプション表示です。
押すと次のように表示タイプから検索、動画の再生操作やラブラリのアップデート(リスト更新)などが選べます。

シンプルな画面だけに少し分かりにくいですね。

ちなみに、動画再生中にEnterを押せばシークバーも表示され再生・停止・早送り巻き戻しといった操作パネルが表示されます。

キーボードの割り当ては他にもあります。
ここでは最低限のキー操作です。LibreELECの公式サイトやフォーラムで確認してください。

画像のスライドショー

次は画像のスライドショーです。
簡易的なもので、画像を次々と表示させることができます。
ピクチャーのフォルダに画像をまとめておきましょう。

設定 –> プレイヤーのピクチャーから最低限の設定ができます。

表示時間、ズームエフェクトとランダム表示の有無といった程度しかありませんが実用的です。
スライドショーは画像のリスト画面などで、オプションを表示すると開始することができます。


メニューとして組み込まれているため、画像を用意するだけで済みます。

NASに保存したメディアを表示させる

LibreELEC自身は最初からネットワークに公開されています。
パスワード認証されていませんから、手元のマシンからLibreELEC内が見えるハズです。

メインメニュー –> LibreELEC

既にネットワーク内にあるNASのメディアを表示させるには、ビデオを追加からNASの場所を追加します。

参照ボタンからリスト一番下にある「ネットワーク上の場所を追加」を選び、手動で追記していくのが確実です。

今回指定しているNASは、OpenMediaVaultをPi 5にインストールしたものを使っています。
次のようにSMBを選び、サーバー名、共有フォルダ名、ユーザー名とパスワードで接続できます。
環境に合わせて読み替えてください。

追加ボタンで追加し、メディアソース名はmovieにしました。任意で入力します。

ビデオカテゴリー内にNASとしてmovieが表示されました。
NAS内の動画などが表示され再生もスムーズです。

最後に、メインメニューに必要が無いカテゴリーは削除することもできます。
お気に入りに追加したり、そもそもホーム画面を飛ばして表示することも設定で可能です。

動画再生は使い方次第

LibreELECはホームユースが基本かもしれません。産業用ラズベリーパイでもインストールが可能ですから、使い方によっては冒頭に述べたような教育用や宣伝用、イベント用に重宝します。

大きなTVやモニターに繋ぐだけで済みます。
ネットワーク環境が乏しいならUSBメモリーにファイルを格納すれば電源の確保だけです。
ネットワークに接続できるなら、別のサーバーにあるファイルをそのまま再生することで、事前にファイルのコピーも必要はありません。

産業用途なのに動画ファイルだけの再生ではいささか勿体ない気もしますが、堅牢なエンクロージャーケースに収まった産業用ラズベリーパイなら、一般のRaspberry Pi よりも様々な環境に設置が可能になるメリットがあります。
ノートパソコンを使うよりも操作も楽ですし場所も撮りません。プレイリストを作れば長時間の再生も熟せます。

気軽に自社製品の案内を流してみてはいかがでしょうか。

参考:


記事寄稿:ラズパイダ

非エンジニアでも楽しく扱えるRaspberry Pi 情報サイト raspida.com を運営。ラズベリーパイに長年触れた経験をもとに、ラズベリーパイを知る人にも、これから始めたいと興味を持つ人にも参考になる情報・トピックを数多く発信。PiLinkのサイトへは産業用ラズベリーパイについて技術ブログ記事を寄稿。