市販されているRaspberry Pi 5(以下、Pi 5)は、Raspberry Pi Imagerのユーティリティにあるイメージファイル(Misc Utility images)を使用してmicroSDカードに書き込み、Pi 5の電源を入れることでブートローダー(bootloader)を更新します。
一方、PL-R5(内部のCompute Module 5)の場合はmicroSDカードは使いません。 コマンドを実行して新しい .binイメージファイルを書き込んでアップデートします。
どちらも基板上のSPIフラッシュ(通称EEPROM)にブートローダーを保持しています。
この記事では、PL-R5のブートローダーをアップデートする手順を記します。
※PL-R4は機器単独では更新できませんでしたが、PL-R5はコマンドで更新可能になりました。
今回の環境
PL-R5はモニターに繋ぎ、インターネットに接続している状態です。
実機単体で作業:
- PL-R5
- microHDMI to HDMIケーブル(PL-R5側は保守用ポート)
- インターネットへ接続済み
SSH接続経由で作業:
- Windows PC(Proバージョンを推奨)
- Putty(SSHクライアントツール)
※SSH接続で他のマシンから実行する場合、WindowsならPutty(SSHクライアントツール)などが必要です。

バージョンを確認
先に現在のブートローダーのバージョンを確認します。
これからバージョンアップしたいブートローダーを指定するため、更新履歴も参照しておくと良いでしょう。
ブートローダーの更新履歴を確認できるページ:
https://github.com/raspberrypi/rpi-eeprom/blob/master/firmware-2712/release-notes.md
※GitHub Releasesにあるzipは更新用の.bin配布ではなく、EEPROM復旧用の起動イメージです。
PL-R5(またはCM5)のブートローダー通常更新は、OS内のpieeprom-xxxx-xx-xx.binを使用します。
今後のコマンドの実行は、実機ターミナルまたはPuttyでSSH接続して行います。
vcgencmd bootloader_version
以下のような出力がされて確認できます。
2025/05/08 15:13:17
version 69471177ba7e4cb7597cb2496f2a0b23f19c1113 (release)
timestamp 1746713597
update-time 0
capabilities 0x0000007f
EEPROM更新ツールのセットアップ
同じくコマンドでEEPROM更新ツールをセットアップします。
sudo apt update
sudo apt install -y rpi-eeprom
新たにインストールされるか、rpi-eeprom はすでに最新バージョン (28.13-1) です。であればOKです。
ブートローダーイメージファイル(.bin)
イメージファイルは、以下の場所に年月日別で保存されています。(例:pieeprom-2025-12-08.bin)
ls /lib/firmware/raspberrypi/bootloader-2712/stable/
今回は以下の年月日別のファイルがありました。
pieeprom-2025-05-08.bin pieeprom-2025-12-08.bin pieeprom-2026-01-21.bin recovery.bin
pieeprom-2025-11-05.bin pieeprom-2026-01-16.bin pieeprom-2026-02-06.bin
イメージファイル(.bin)はOSの更新で追加されます。
ディレクトリbootloader-2712は搭載されているCPUチップ型番です。(PL-R5・Pi 5/CM5:Broadcom SoC BCM2712)
PL-R5では、搭載SoC BCM2712に対応したbootloader-2712ディレクトリ内から選びます。ディレクトリstableは安定版です。任意で選ぶ以外、基本はこの中から選ぶことになります。
Raspberry Piの種類により型番は異なります。互換性はありませんので気をつけてください。(例:Pi4/CM4:BCM2711)
ブートローダー、ファームウェア、EEPROM、OSの違い
ブートローダーと似たような言葉にファームウェア(firmware)や、書き込み先のEEPROM、ファイル名のpieepromなど、少しややこしい部分があります。
それぞれ以下のような意味の違いがあり、今回のブートローダーは、基板上のEEPROM内に保存されています。OSのアップデートとは別物です。
- ファームウェア:機器内部で動く制御ソフトウェア
- ブートローダー:OS起動順序を担当するファームウェアの一種
- OS:起動後にユーザーが使う基本ソフトウェア
ブートローダーはファームウェアの一種であり、文脈によっては”ファームウェア更新”や”EEPROM更新”と表現されることがあります。
ブートローダーの指定書き込み

コマンドは、-dオプションにより、特定のブートローダー(.bin)にアップデートができます。-fオプションを付与してファイルの場所を指定します。sudo rpi-eeprom-update -d -f pieeprom.bin
以下は、記事執筆時点のpieeprom-2026-02-06.binを指定するコマンド例です。
sudo rpi-eeprom-update -d -f /lib/firmware/raspberrypi/bootloader-2712/stable/pieeprom-2026-02-06.bin
成功すると以下のように、最終行のアップデートがサクセスフルと表示されます。
Verifying update
VERIFY: SUCCESS
UPDATE SUCCESSFUL
再起動で新しいブートローダーが有効になります。
sudo reboot
これでアップデートは完了です。
ブートローダーの役割
ブートローダーは、その名の通り起動順序を設定できます。
デフォルト(標準)は以下のようにBOOT_ORDER=0xf461となっているのが分かります。
[all]
BOOT_UART=1
BOOT_ORDER=0xf461
NET_INSTALL_AT_POWER_ON=1
0xf461は右端から順に読みます。
この場合の起動順序:
→ eMMC(0x1)
→ M.2接続NVMe SSDドライブ(0x6)
→ USBメモリー/USB接続SSD(0x4)
→ 先頭へ戻り再試行(0xf)
ブートローダーの値一覧(PL-R5/CM5用)
| 値 | 起動先 | CM5向け補足 |
|---|---|---|
0x1 | eMMC | eMMC搭載CM5モデルで有効。内蔵ストレージeMMCから起動します。 |
0x2 | Network | ネットワーク起動。PXE/TFTP系の環境向けです。 |
0x3 | RPIBOOT | USB経由で母艦PCへ接続し、eMMC書き込み・復旧に使います。 |
0x4 | USB-MSD | USBメモリやUSB SSDなど外部ストレージから起動します。 |
0x5 | BCM-USB-MSD | 現在は通常用途で使われず、実質使用しません。 |
0x6 | NVMe | M.2スロット接続のNVMe SSDから起動します。 |
0x7 | HTTP | Ethernet経由のHTTP bootです。企業・検証環境向けです。 |
0xE | STOP | ここで起動処理を停止します。 |
0xF | RESTART | 起動順の先頭へ戻り、再試行します。 |
※Pi 5では0x1がmicroSDカード
ブート順序の変更方法
以下のコマンドで起動の順序を編集できます。-Eオプションを付けると、普段使っているエディタ設定(nanoなど)を引き継いで編集画面が操作しやすくなります。
Raspberry Pi OSでは、-Eオプションを指定しないとviで開く場合があり、慣れていないと操作に戸惑うでしょう。
通常はRaspberry Pi OSではターミナルでnanoを使う人が多いと思うので、-Eオプション付与はオススメです。
sudo -E rpi-eeprom-config --edit
開いたら値を書き換えます。
BOOT_ORDER=0xf461
産業用途ではeMMC起動が一般的で、容量や速度が必要な場合のみNVMe SSDを優先することがあります。eMMCを予備の起動先にする構成なら、記述はBOOT_ORDER=0xf16です。
モデル別による注意点

同じRaspberry Pi でもモデルによって搭載チップが異なれば対応するイメージファイルも異なります。
PL-R5はCM5を基に開発されていますから、搭載チップモデルはPi 5/CM5と同じになり、対応するブートローダーのイメージファイルも同じです。
しかし、アップデート方法はコマンドで行います。ここはPi 5と異なります。
加えて、eMMCの有無などでPi 5とブートローダーの値が変わります。
他にも、”ファームウェア”、”EEPROM”、”ブートローダー(bootloader)”と、厳密には違う言葉も同じような意味で表記されている場合があります。
この記事はPL-R5で行うブートローダーのアップデート方法でした。
インターネットにはPi 5の情報が多いので、迷われたら弊社担当までお問い合わせください。
記事寄稿:ラズパイダ
非エンジニアでも楽しく扱えるRaspberry Pi 情報サイト raspida.com を運営。ラズベリーパイに長年触れた経験をもとに、ラズベリーパイを知る人にも、これから始めたいと興味を持つ人にも参考になる情報・トピックを数多く発信。PiLinkのサイトへは産業用ラズベリーパイについて技術ブログ記事を寄稿。

