Raspberry Pi 公式ブログから発表された「Raspberry Pi Connect」はもう試されたでしょうか。
2024年5月にベータ版として公開され、何回かのバージョンアップで機能が追加され、記事執筆時点でv2.1.0になりました。以前までのVNCは推奨されなくなり、その代わりになります。
Raspberry Pi Connectを利用するには、Raspberry Pi IDを作成する必要があります。メールアドレスとパスワード、デバイス名の設定だけで済みます。無料です。
ローカル内のみならず、スマホなどモバイル通信でも自宅にあるRaspberry Pi OSデスクトップにアクセスできます。
Raspberry Pi Connectの最大のメリットは、非常に簡単な手順で画面共有がおこなえる点です。
すべてのRaspberry Pi モデルで利用することが可能です。自宅のRaspberry Pi に接続してデスクトップを遠隔操作できる優れものです。
ネットワークの知識は要らない
自宅内であっても、メインマシンからRaspberry Pi の画面共有を行うには、これまではVNCを使う手段でした。接続するのにローカルIPアドレスを見つけて指定しないとなりませんでした。
外出先からアクセスするには、ファイアウォール設定を変更したり、そもそもルーターに特定ポートを公開しないとなりませんでした。
Raspberry Pi Connectなら何も必要はありません。
Raspberry Pi IDでログインすれば、登録したRaspberry Pi をクリックするだけで遠隔操作として繋がります。
動作に必要な環境
- Raspberry Pi OS bookworm 64bit以降*
- Raspberry Pi IDでサインインする
ややこしいネットワークの知識が要らないのは助かります。
(*PL-R4, PL-R5Mシリーズの出荷時イメージは異なる場合がありますのでご確認ください)
rpi-connectはプリインストールされている
現行のRaspberry Pi OSでは、最初からrpi-connectがインストールされています。上部タスクバートレイにアイコンが出ています。


最初にrpi-connectコマンドで有効にします。
rpi-connect on
✓ Raspberry Pi Connect started
あとはメニューバーのアイコンからRaspberry Pi IDでサインインすることで、ID側で紐付けられたデバイスとしてアクセスすることが可能になります。
既にRaspberry Pi IDを作成済みなら、操作したいRaspberry Piをデバイスの登録から設定するだけです。
Raspberry Pi IDの作成
(Raspberry Pi 側で作業)
はじめての場合、Raspberry Pi IDを新規作成します。作成はサインインの画面のCreate one for freeリンクから作成できます。
アイコンをクリックしてサインインを選べば、既定のWebブラウザが開きます。

新規作成ではメールアドレスとパスワード、登録するデバイスの名称を入力します。

Waht should we call you?はなんでも構いません。ラベルみたいなものです。今回はComputeModule4 なのでCM4としました。自分が分かりやすいように付けましょう。
Raspberry Piが1台しかないなら問題ありませんが、複数をお持ちならモデル名や設置場所といった意味を持たせると分かりやすいと思います。
登録ができたら、view all devicesから一覧画面になります。最初は1つだけですね。

自分のアカウントにあるデバイス欄を覗くと、登録されていることが分かります。この画面からConnect Viaで画面共有かシェルリモートを選び接続しできます。

既にIDを作成済みなら、サインイン(ログイン)ボタンからメールアドレスとパスワードを指定すればOKです。

2段階認証の設定も可能です。外部からも接続できるため、後ほど設定した方が良いでしょう。

家庭内のPC/Macから接続してみる
(操作したい側で作業)
Raspberry Pi 側はそのままに、家庭内のマシン(PC/Mac)から繋いでましょう。
今回試した環境では、接続したいRaspberry Pi Compute Module 4(産業用ラズパイPL-R4)は、メインマシン(Mac)の隣にあり家庭内LAN状態です。Raspberry Pi Connectであれば、IPアドレスも何も調べなくても、デバイス名を選ぶだけで画面共有(遠隔操作)ができます。
操作したいPC/MacのWebブラウザからRaspberry Pi Connectのページに移動し、同じようにログインして目的のデバイスをクリックするだけ接続できます。
Raspberry Pi Connect:https://connect.raspberrypi.com/


操作したいCM4と命名したデバイスの画面共有(Screen Sharing)を選びます。


数秒待つだけで繋がります。
MacのWebブラウザ内に、先程デバイスを登録した途中のデスクトップが表示されました。
画面の周りには各種ボタンが配置されています。接続を終えるには左上の切断(Disconnect)ボタンで終了します。
マウスの動きも比較的スムーズですよ。
アイコンで状態が分かる
上部タスクトレイにあるアイコンが変わることに気がつきます。

左から順番に、サインアウト、サインイン中、接続中、の意味です。
外出先からの接続(スマホ)
今度は外出先から自宅のRaspberry Piに接続してみます。
Raspberry Pi Connectは、Zoom、Slack、Microsoft Teams、Google Meet等をブラウザで使用するのと同じリアルタイム通信技術を用いています。

LTE回線(4G)のあるiPhoneで試してみました。
先程と同じように今度はiPhoneのWebブラウザからRaspberry Pi Connectの画面に接続します。
サインインすればデバイス名とConnectボタンが表示されるので選ぶだけです。

iPhoneの縦表示だととても小さく操作は困難です。
iPadなどタブレット端末で使ってみたいですね。
小さい画面はそれほど変わりませんがスマホを横表示にしてみます。

横向きにすると、下部に特殊キーボタン、上部には操作端末とコピペができるボタンが出てきました。
何か操作をするより、確認をするには支障は無さそうです。操作はスマホだと難しいですね。
これならルーターのポート開放をせずとも外出先から簡単に繋げられます。
自宅のRaspberry Piを会社から操作、確認するのも同じです。
タイムラグ
小さい画面ながらも指でウィンドウをドラッグしたところ、計測したわけではありませんが、ローカルと比較すると1.5秒程度の遅れで追従する様子でした。この辺は通信速度の問題もあったり、表示画面の解像度もありますから一概には言えません。
使用色数を落とすといったオプションはまだ見当たりませんでした。
この辺りはまたバージョンアップで追加されるかもしれません。
せめて色数が抑えられれば、動作はもう少し速く感じられるでしょう。
メールでお知らせ
ログインに成功した旨など、Raspberry Pi IDで設定したメールアドスへ通知が届きます。

ネットワークが苦手でも繋げられる
予めデバイスに登録しておけば、ルーターのポート開放も要らずアクセスできるため、LinuxやRaspberry Piビギナーにはとても助かります。ビギナーだけではなくても複雑な設定が要らないことは助かりますね。
セキュリティは怖いので、アカウントの設定から二段階認証に設定しておいた方が良さそうです。

操作したいRaspberry Pi がデバイスに登録されていてインターネットに接続できていれば、基本的に問題無く繋がります。
別に外出先からではなく、どちらも家庭内にあったとしても重宝する仕組みだと思います。何よりも簡単です。IPアドレスが全く分からなくても繋がるからです。
Raspberry Pi Compute Module 4を使った産業用ラズパイでも同じようにアクセスできました。
ぜひ一度スマホなどの外部からアクセスして使い勝手を体感してみてください。
Raspberry Pi Connect for Organizations
1対1だけでなく、1対複数人が操作できる仕組みが用意されています。「Raspberry Pi Connect for Organizations」です。
ユーザー数は無制限で、デバイスあたり月額0.5ドルの有料プランです。1ヶ月間の試用ができます。
産業用途であれば複数人がアクセスできるのは必要ですね。

詳しくは公式ページやドキュメントを参考にしてください。(https://connect.raspberrypi.com/organisations/new)
記事寄稿:ラズパイダ
非エンジニアでも楽しく扱えるRaspberry Pi 情報サイト raspida.com を運営。ラズベリーパイに長年触れた経験をもとに、ラズベリーパイを知る人にも、これから始めたいと興味を持つ人にも参考になる情報・トピックを数多く発信。PiLinkのサイトへは産業用ラズベリーパイについて技術ブログ記事を寄稿。