新しいCompute Module 5を従来のCM4とベンチマークテストで比較してみた

新しいCompute Module 5(以下、CM5)は、市販されているRaspberry Pi 5同様に性能が大幅にアップしました。
そこで、Compute Module 4(以下、CM4)とCM5でベンチマークテストを試しました。
使用したのはGeenbenchとPiBenchmarksの2種類です。Geekbenchはラズパイとしての処理性能、PiBenchmarksはアクセスするドライブの性能を測定するのに向いています。

試用したのは、「PL-R4」と「PL-R5M」です。
CM4を搭載している「PL-R4」のOSはbullseye、CM5を搭載している「PL-R5M」はbookwormです。
それぞれeMMCで起動させています。

Geekbench

ベンチマークテストで有名なGeekbenchはRaspberry Piでも実行できます。但し、ベータ版の扱いであるプレビュー版しか対応していません。
CPUがArmだからです。

Geekbench preview版:https://www.geekbench.com/preview/

Linux用はUbuntu18.04以降に対応とありました。同じDebian由来のためかRaspberry Pi OSでもトラブルなく動作しました。
記事執筆時点のバージョンはGeekbench-6.4.0-LinuxARMPreviewです。

実行方法

Geekbenchのプレビュー版は、ダウンロード後にコマンドで実行するだけで動作します。お手軽ですね。

ダウンロード

wget https://cdn.geekbench.com/Geekbench-6.4.0-LinuxARMPreview.tar.gz
tar -xf Geekbench-6.4.0-LinuxARMPreview.tar.gz
cd Geekbench-6.4.0-LinuxARMPreview

実行

./geekbench6

計測された結果はGeekbenchへ自動的にアップロードされ、計測結果のURLリンクがターミナル画面に出力されます。(例:https://browser.geekbench.com/v6/cpu/<id>

初めてのGeekbenchを使う場合、URLから訪れたページでアカウントが作成できます。作成すると結果をまとめて保存できたり、比較表示もできるようになるためアカウントの作成をおススメします。

実行時間はラズパイではまあまあの時間がかかります。少し待ちましょう。

Geekbenchの結果

Geekbenchはスコアで表現されています。詳細として具体的な計測値も分かります。

結果として、CM5のスコアはCM4と比べものにならない程の差に感じました。
桁が違います。ちょっと驚きです。
これなら体感速度でも感じられる性能差ですね。

シングルコアでもマルチコアでもCM5の圧勝です。実に3.4倍というスコア差です。

今回試した結果のURL

計測した結果は、細かいスペックも表示されます。例えばファイル圧縮が126.6 MB/secといった具合です。

2つのグラフを比較できるように表示してくれる機能があります。
比較したグラフのURLは次の通りです。

CM5を元にした比較グラフ
https://browser.geekbench.com/v6/cpu/compare/10676765?baseline=10638221

CM4を元にした比較グラフ
https://browser.geekbench.com/v6/cpu/compare/10638221?baseline=10676765

どこが大幅にアップしたのか確かめてください。

PiBenchmarks

次はPiBenchmarksで計測してみました。
Geekbenchと同じようなものです。こちらもスコアで表現されています。

以前からラズパイダでNVMeドライブの計測に使っていました。(参考:https://raspida.com/pi5-nvme-ssd-like-a-pc/

OSがeMMCで起動しているなら、以下のコマンドで実行されます。

sudo curl https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh | sudo bash

今回はこのままでも構いません。
もしもeMMCで起動させている状態でmicroSDカードを計測したい場合は、対象デバイスを指定しないとなりません。
オプションとしてデバイスのパスを指定して実行します。

findmntコマンドなら、ソース元のパスとマウント先がどちらも表示されて便利です。
この例では、/dev/mmcblk0がeMMC、/dev/mmcblk2がmicroSDカードなのですが、マウントされている場所も分かりますね。

├─/boot/firmware               /dev/mmcblk0p1 vfat       rw,relatime,fmask=0022,dmask=0022,codepage=437,iocharset=ascii
└─/media/pi/SDCARD             /dev/mmcblk2p1 vfat       rw,nosuid,nodev,relatime,uid=1000,gid=1000,fmask=0022,dmask=00

別のドライブの計測はダウンロードしてから実行

今回使用している産業用ラズベリーパイなら、別のドライブ(例:microSDカード)も使えるため、bootfs以外を計測したいなら、一旦shファイルをダウンロードしてパスを指定してあげます。

wget https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh
chmod +x Storage.sh

ダウンロードした場所でパスを指定してshファイルを実行すればOKです。

sudo ./Storage.sh /media/pi/SDCARD

今回はbootfsであるeMMCのスコアを知りたかったので、パスを指定せずに実行しました。
起動しているドライブ以外を計測したい場合は、一度ダウンロードしてパスを指定するのを忘れないようにしましょう。

CM4のeMMC読み書き速度

PiBenchmarksのWebサイトもGeekbench同様、自分の計測した一覧も見られますし、他のテストデータと見比べられます。(比較表にはできません)

Web上ではRaspberry Piのモデル別にフィルタリングできるため、どのメーカーのドライブがよく使われているかといったことにも使えます。NVMe接続SSDドライブを購入する参考にしています。

先程と同じように、CM4を基準にCM5と比べてみます。
CM4のスコアです。画像はターミナルに表示されたものです。

CM4 eMMCの結果URL:https://pibenchmarks.com/benchmark/104107/

他のテストデータを見てもスコアは6000前後で同じくらいでした。

CM5のeMMC読み書き速度

新しいCM5はどうでしょう。桁違いとはこのことです。

CM5 eMMCの結果URL:https://pibenchmarks.com/benchmark/104123/

他の方がアップされているスコアを見ても、13,100程度で同じくらいでした。
中にはオーバークロックした計測でスコアが14400台も見受けられました。

CM4のeMMCと比べるまでもなく、スコアはもちろん、読み書きすべての項目でCM4を凌駕しています。
やはりCM5になって性能がだいぶアップしたのが分かります。

他の計測方法

GeekBenchやPiBenchmarksの他にも計測できるツールアプリがあります。
こちらもeMMCやmicroSDカードを指定して実行します。

hdparmコマンド

シンプルにhdparmコマンドで読込速度だけを計測しても良いでしょう。
正確性を期すために4・5回は同じコマンドを実行して平均を取ってください。

読込速度なら-tオプションです。

hdparm -t /dev/mmcblk0

GUIならgnome-disks

GUIで計測できる代表例として、gnome-disksがあります。

gnome-disk-utilityをインストールすると使えます。
ラズベリーパイでも動作しました。

sudo apt install gnome-disk-utility

設定はデフォルトのままでも良いでしょう。

CM5の読み書き速度は概ね2倍になった?!

GeekbenchもPiBenchmarksもどちらも使い勝手は似たような印象でした。
先ずは有名でもあり、棒グラフにしてくれるGeekbenchを試してみると良いでしょう。

今回はGeekbenchの計測で考えると、読み込み速度はCM4がおよそ80MB/s、CM5が309MB/sとなり、実に約3.8倍以上になっていました。
書き込み速度も約1.7倍にアップという結果です。

トータルではスコアが示す通り、CM4のスコアは6,000台、CM5がスコア13,000台のため、CM5になって読み書きの速度は2倍以上も性能アップしたことが窺えます。
処理が速いことに越したことはないので、これから産業用ラズベリーパイを導入するならCM5になっていきそうですね。

気を付けたいのは、CM5は対応OSがbookwormからしか使えません。OSのバージョンによって不具合のあるモジュールやアプリケーションを使いたいなら、まだまだCM4の選択肢も捨てがたいです。

※産業用ラズベリーパイの「PL-R4」シリーズは、CM4で構成されていますが、CM5との互換性があるため簡単に変更することが可能です。CM4と同じキャリーボードにCM5をのせたラインナップが「PL-R5M」です

CM4からCM5へ載せ替えたキャリーボード

処理スペックだけが重要ではありませんが、これまで荷が重かったプロジェクトが動作するかもしれません。
特に重いデータを扱いたいときは少しでも速い方が良いものです。
今後はRaspberry Pi Compute Module 5も日本国内の産業界で目にする機会が多くなりそうです。


記事寄稿:ラズパイダ

非エンジニアでも楽しく扱えるRaspberry Pi 情報サイト raspida.com を運営。ラズベリーパイに長年触れた経験をもとに、ラズベリーパイを知る人にも、これから始めたいと興味を持つ人にも参考になる情報・トピックを数多く発信。PiLinkのサイトへは産業用ラズベリーパイについて技術ブログ記事を寄稿。